ご挨拶日記

新年おめでとうございます。
皆様も清々しくお正月をお迎えの事と存じます。
除夜の鐘でリセットされ、元旦を迎える晴れやかで淑気に満ちた気分は、本当にいいものですね。
「おめでとう!」と元気な声で年の初めを祝い合って、お屠蘇とお雑煮を頂いて初詣、お正月の楽しみです。
  
昨年はミュンヘンでの日独協会主催の演奏会で、長唄を唄わせて頂き、日本の伝統芸能がドイツの方々にも興味深く受け入れられていると感じました。
今年も今までのご縁を大切にして、また、新しい出会いに恵まれて、お一人でも多くの方に、三味線の楽しさ、三味線で唄う楽しさをお伝え出来るよう願っております。
皆様にとって、幸多き一年でありますよう、お祈り致します。
   
YouTubeで「梅は咲いたか」「さのさ」をアップしております。
「梅は咲いたか千本扇福」「さのさ千本扇福」でご検索下さいませ。
  
2017年元旦 千本扇福


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端唄千本流副家元 千本扇福(ちもと せんふく)
 
 
 
 
  
・・・ 扇福つれづれ日記 ・・・
端唄・俗曲のことはもとより、思いいついたこと、
気が付いたこと、楽しかったこと、短歌、俳句、川柳、etc.
定期的に書き込んで参ります。
2003年9月21日 秋の七草

「秋の七草虫の音に 鳴かぬ蛍が身を焦がす
君を待つ虫 なく音に細る 恋という字は大切な」

「桔梗刈萱おみなえし 萩にうらみの片枕
風か君かと よもやの窓に 尾花撫子ふじばかま」

秋の夜長は来ぬ人を待つものなのですね。
来てほしい人が来てくれない切なさ、想いが伝わらないじれったさに身をよじる。秘すれば花とは云うけれど・・・。
風の音にもすぐ振り向いて、思わず戸口へ行ってしまう。外は月が冴え冴えとして、すすきが風にゆれている。
「ちょっと風にあたりたかっただけさ」なんて月に言い訳して、ため息をつく。
やはり、うら若い乙女より、恋の諸分けを知った年増を登場させたくなるのが、秋の夜ですね。

8月から9月にかけて、皆さんも晴れた夜は火星を楽しんだことでしょう。
月の光の輪の中で赤く輝いていた火星、宇宙を司る神様はいるんだ!と思わずにいられませんでした。
6万年は神様には長くない年月なのでしょうか。

正気から離れる癖か鈴虫よ


 
2002年7月16日 縁かいな

 夏の涼みは両国の 出船入船屋形船 
 上がる流星星下り 玉屋が取り持つ縁かいな

花火見物で賑わう隅田川の情景が浮かんできます。
流星は花火、星下りは夜空にパッと咲いた花火が終わりにしずくの様になって消えていく様です。
現代の花火は次から次と打ち上げられますが、江戸の頃は花火と花火の間隔が今よりずっと長かったようです。夜空を見上げて、しばし待っているとドッーンと大輪の花が夜空に、「玉屋ぁ〜」と声がかかり、またしばし待つ・・・。夏の夜のひととき、夜空の華に人々は暑さも浮世の憂さも忘れたことでしょう。
そして、去年の夏隅田川の花火見物の折、屋形船で隣り合わせたのが縁で・・・という夫婦もいたかもしれません。
端唄の世界でしたら、荒い模様の浴衣にうちわ片手のいなせな兄ぃさんと小股の切れ上がった姐さんが、一杯機嫌で「玉屋ぁ〜」となれば申し分ないですね。
なかには猪牙舟(ちょきぶね)で花火見物という御仁もいたようです。
「縁かいな」は派手な曲ではありませんが、浴衣ざらいには必ずと言うほど唄われる曲です。

※「玉屋」 江戸の花火屋の屋号、鍵屋と共に名高い。
※「猪牙船」 猪の牙に似た細長く屋形の無い速度の速い船、特に吉原通いの遊客に用いられた。

夏帯や眼中のものただひとつ


 

2002年6月20日 花菖蒲

ワールドカップ そして・・・
日本中がW杯に湧きました。決勝トーナメント一回戦で日本はトルコに惜敗しましたが、ベルギー、ロシア、チュニジア戦と勝ち進み、ベスト16の夢は叶いました。
シュートが決まった瞬間は思わずこぶしを振り上げて歓喜してしまいます。非日常的な歓喜を与えてくれるからこそ、人々をこれほどまでに熱くさせるのでしょう。球を蹴ることは人間の本能なのでしょうか。
そんな6月の雨上がりの日、明治神宮へ花菖蒲を見に出掛けました。何処からも菖蒲田全体を見渡せない風雅な作りのこの菖蒲園が私は好きです。前日の強風で花は少し疲れぎみでしたが、150種、1500株の菖蒲を堪能しました。
”紫衣の雪”と名づけられた大ぶりな花は、まさに紫の衣に雪が降り積もったという風情で古今集に詠まれた佳人の衣の様で、いつまでも前を立ち去りたくない気分になりました。
清正の井戸に向かう途中のつつじ山のなだらかな傾斜を登ると木の間がくれにはるか下方に菖蒲田が見え、華やいだ静けさは都会に居る事を忘れさせてくれます。
そして久しぶりに社殿へ。社殿の両脇の楠木の大木は見事です。雨が降り出して木々がいっそう匂い立ちます。深呼吸をすると厳かな空気が体いっぱいにみなぎる感じです。
東京の真中にこんな場所があるなんて・・・。

梅雨寒や呑み込み悪き女弟子
(東京新聞掲載 選者/鷹羽狩行)


 
2002年5月11日 初がつお

「初物を食うと75日長生きする」気っぷのよさを第一とする江戸っ子の美意識の表われでしょうか、鰹(かつお)に限らず初物買いの熱狂ぶりはかなりのものだったようです。
『まな板に 小判一枚 初がつお』と詠まれた通り、十代将軍家治(1760〜1786)の頃には”初がつお”1本が1両〜2両3分 (職人の月収が2両位)もしたようです。見かねた幕府は、初物の規制や初物買いの禁止令を1665年から数回出しています。1742年、八代将軍吉宗の時には魚を含む「初物禁止令」が出されましたが、効果の程は・・・。
新鮮で高価な鰹(かつお)は江戸っ子のカッコよさを誇るシンボルだったのでしょう。
『目に青葉 山ホトトギス 初がつお』と聞けば「髪結新三」(かみゆいしんざ)が思い浮かびます。
講釈の「白子屋政談」を題材に、黙阿弥が五代目菊五郎の為に書き下ろした”生世話もの”ですが、初夏の風情が漂い、江戸前のセリフが小気味よく、七五調のセリフでの盛り上がりも見事。今頃の季節に見たい世話狂言です。

※「目には青葉 山ほととぎす 初がつお」が「目に青葉」となったようです。

※生世話もの(きぜわもの)---低い階層の庶民の生活を写実に近い演出方法で描いた脚本。

とりあえず 風に吹かれて 藤の花
(東京新聞掲載 選者/時実新子)


 
2002年4月1日 あはれ花びらながれ
 
 あはれ花びらながれ
 をみなごに花びらながれ
 をみなごしめやかに語らひあゆみ・・・   三好達治「甃のうえ」
 
風に吹かれて散る花びらを見ていたら、ふと思い出しました。
今年の春は花にせかされてのお花見、花に浮かれる頃ソメイヨシノは散り始めました。
桜の頃は風の強い日が多いですね。天のお指図でしょうか。
「明日ありと思う心の仇桜 夜半に嵐の吹かぬものかは」親鸞十九歳の時の歌とか。
昨日、四ッ谷駅から紀尾井ホールへと行く途中に淡い黄色の変わった八重桜が咲いていました。枝先がかすかに風に揺れ、びっちりと咲いた花が舞妓さんの髪にさした花かんざしのようでした。

吾と君と時のほとりにたゆたいて 花びらになる四月のまひる
(「ここは牛込、神楽坂」掲載)


 
2002年3月5日 ラ・プリマベーラ
ギリシャ神話では春を運んでくるのは西風の神、ゼフュロスです。
雪を解かし、穀物を育て、花を咲かせ、風の神四兄弟で一番優しい風を吹かせます。
小学校の3、4年生の頃、あこがれの大学生のお兄さんが新宿御苑へお花見に連れて行ってくれる事になりました。ところが熱を出して行かれなくなってしまったのです。お兄さんはお見舞いに「ギリシャ神話」を届けてくれました。何度も何度も読んだので、ギリシャ神話の神々とはご昵懇になりました。
プリマベーラ、美しい響きだと思いませんか。イタリア語の春。有名な「ヴィーナス誕生」の作者ボッティチェリの「ラ・プリマベーラ」には三美神やヴィーナスやキューピッドが優雅な動きで描かれ、春の喜びに満ちています。
さあ、西風の神ゼフュロスの道案内で春を迎えに旅に出ましょう!


 

2002年1月26日 御所車(香に迷う)
「香に迷う 梅が軒端に匂い鳥 花に逢う瀬を待つとせの明けて嬉しき懸想文 開く初音のはずかしく(むづかしく)まだ解けかぬる薄氷 雪に思いを深草の百夜も通う恋の闇 君が情を仮寝の床の枕片敷く夜もすがら」 
恋に迷う我が身を梅の香に迷う鶯になぞらえ、そして、小野小町のもとへ百夜通ったという深草の少将に思いをはせます。
思う人の心の薄氷が解けるのをひたすら待ち続ける恋の闇。夜もすがら想い焦がれる恋やつれした美しい公達。
王朝の恋の物語には寒気にりんと咲く梅の花が似合います。

踏み出せば深き闇なり冬銀河


 
2002年元旦 
初衣桁母の好みし青海波

  
初衣桁 「はつえこう」新年の春着をかける衣桁。
  青海波 「せいがいは」波がたの染め模様で、雅楽曲、清元の曲名にもある。

 
1月18日に、私の清元の師匠である清元梅寿太夫主催の「清元登志寿太夫三回忌追善演奏会」が国立小劇場で催されます。私も「峠の万歳」で出演させて頂きますので、私の出し物「峠の万歳」について少しふれてみたいと思います。
 
「峠の万歳」
作詞:渥美清太郎
作曲:三代目清元梅吉(後の寿兵衛)
昭和16年、東京歌舞伎座において日本舞踊協会公演で初演。
(太夫:藤間友章 才蔵:藤間寿右衛門)
 
江戸中をめぐり、門に立って初春を祝った万歳の太夫と才蔵。やがて正月も過ぎて松のとれる頃、二人はそれぞれの故郷へ帰ることになります。三河へ帰る太夫を峠まで見送る才蔵。また来年も逢う約束の盃を酌み交わし、名残りに鼓を打つ才蔵。
「一本の柱は・・・二本の柱は・・・三本の柱は・・・」と、めでたい柱立てを唄い舞う太夫と才蔵。
いつしか日も暮れかかり夕風の中、西と東に別れていく二人。峠で見送る才蔵を幾度も振り返りながら、太夫の姿が小さくなっていきます。才蔵の打つ鼓のこだまも、もう太夫には届かない・・・


 
2001年12月7日 ホームページ雑感
自分の経歴や現在の仕事などホームページの原稿を書いてみると、本当に色々な方々にお世話になって今日まで仕事をしてきた事がよく分かります。
あらためて感謝の気持ちと、自分も人様の役に立てるように心がけねばと思います。書いてみると本当に今まで見えなかった事に気がつきますね。
まわりの方達に恵まれて好きな仕事が出来る事に日頃馴れてしまっていた自分に気がつきました。反省!反省!そして感謝!!

戸をしめて帯解く宵や初時雨  
(「ここは牛込、神楽坂」掲載 選者/冨士真奈美)